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日本の未来

グローバル化に邁進する日本の未来に危機感を抱く者です。歴史認識を正して日本人としての誇りを培いたいと願っています。体験にもとづく本音トークも交えます。

安保法制の盲点を抉(えぐ)る『昭和天皇の戦後日本』


タイトルに掲げた本を図書室で借りて、三部構成のうちまず第Ⅲ部を読みました。 昭和天皇明仁天皇および安倍首相の歴史認識を比較検討し、あるべき日本の立脚点を探った学術書です。著者、豊下楢彦氏の経歴は、京都大学法学部卒、元関西学院大学教授。この本は皇室や安保体制を考える上での必読書だと言っても差し支えないように感じました。


昭和天皇の戦後日本――〈憲法・安保体制〉にいたる道』
豊下楢彦 著 岩波書店 2015年7月28日 第1刷発行


内容紹介(アマゾンからの引用)

敗戦により天皇制存続の危機に直面した昭和天皇。それを打開しようと、どのような行動に出たのか。冷戦が進行していくなかで、天皇は何を考え、いかなる外交 を展開したのか。憲法改正東京裁判、そして安保条約という日本の戦後体制の形成過程に、天皇が能動的に関与していく様を、『昭和天皇実録』を駆使して抉り出す。



「象徴天皇」という天皇観を覆されると同時に、明仁天皇の立ち位置と安倍首相が目指す政治・外交のズレを認識させられます。最も瞠目させられたのは、安倍首相の言う「戦後レジームからの脱却」は、中途半端な考え方であり、明仁天皇の立ち位置 は、「戦前レジーム」からの脱却、すなわち昭和前半の戦争の時代を明確に総括しきることにある、という点です。


また、今回の安保法制の問題のありかを一点指摘するなら、「自国防衛」を怠り、「他国防衛」に走る基本姿勢である、とする分析は、きわめて具体的で明晰です。

安倍首相は「北朝鮮のミサイルは、日本の大部分を射程に入れている」として、日本国民の危機感を再三煽りながら、一方で原発の再稼働を精力的に押し進め、にもかかわらずミサイル対策には何一つ手をつけていません。仮に稼働中の原発にミサイルが命中したら、それこそ日本の「存立危機事態」です。(現にそうした 場合に、急性被ばくで1万8千人が亡くなり、原発周辺86キロ圏が居住不能になるという試算まで出されています。)

「米国に向かう北朝鮮のミサイルを集団的自衛権を行使していかに打ち落とすか」を重要課題として議論している場合ではないのです。

また、世論に配慮して「最大の歯止め」として打ち出された集団的自衛権(武力)行使に当たっての「新三要件」は、憲法九条を前提としての苦肉の策であるから、九条が改正された暁には限定が外され、韓国同様に米国の要請通りの「派兵」を行う可能性が高まる、というのです。

さらに安倍首相は、「占領時代の基本的な仕組み」から踏み出すと公言し、「自主憲法」を目指しながら、日米地位協定には全く手をつけようとしていません。安倍政権はしばしば、沖縄の負担軽減に努めると主張しますが、最大の負担軽減である「米軍機を日本の航空法に従わせる」ということには、言及しようとしない のです。

著者はこれを、「歪(いびつ)なナショナリズム」と呼び、日米関係を「騎士と馬の関係」になぞらえて説明しています。

米上下両院合同会議で、安倍首相が今回の安保法制によって、「自衛隊と米軍の協力体制は強化され、日米関係は、より一層堅固になります」と述べたことは、要するに「より速くより強く走る馬になります」と宣言したことを意味していた。だからこそ、議員一同から、拍手喝采を受けたのであった。(本文より)